医療でも卵が注目される

「たまご」は食用以外でも、私たちの身近なところで重要な役割をしています。ここでは「食品」以外に、「たまご」がどのように利用され、私たちの暮らしに役立っているのかを解説しましょう。「たまご」の用途としては、「食用」が圧倒的に多いのですが、私たちの知らないところで意外な利用もされています。
 
 
特に、近年になって「たまご」の中の特殊な成分を、「抽出」「精製」した「ファインケミカル」としての製品が登場してきました。たとえば「卵白」から抽出される「リゾチーム」、「卵黄」から作られる「レシチン」などが、「医薬品」や「化粧品」などに用いられています。その他にも、「たまご」は栄養豊富で細菌の「増殖」にも都合がよいことから、以前から細菌試験における「培地」や「試薬」としても利用されています。
 
 
「培地」とは、「細菌」の培養試験において、「菌の栄養源」として使われる物質です。また、「細菌試験」以外にも、「人間」や「動物」 (「鶏」も例外ではない)の病気を防ぐ「ワクチン」を製造する際の、「培地」としての用途もあります。こうしてみると、「たまご」は「食用」以外の分野においても、私たちの健康を支えてくれている重要な存在であることが分かります。

リゾチームについて


では、とても重要な成分である「リゾチーム」について、もう少し詳細に説明しましょう。皆さんは風邪薬のコマーシャルなどで、「塩化リゾチーム」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。この「リゾチーム」こそ、「たまご」から抽出される重要な成分です。
 
 
「たまご」は、栄養豊富なことから「細菌」が好み、その影響を受けやすいのですが、その防衛機構がもともと、「たまご」には備わっているのです。「たまご」のいちばん外側の防衛壁は、「放卵」 (産卵)時に分泌されて「卵殻」 (カラ)の表面を覆う、「クチクラ」という薄い膜の層です。この「クチクラ層」は、「たまご」が「パック詰め」されるときに、「洗卵」 (たまごを洗うこと)によって落ちてしまいます。しかし、第二の「防衛壁」があります。
 
 
それが、「卵白」に含まれる「リゾチーム」なのです。「リゾチーム」は1922年に科学者のアレキサンダー・フレミングによって、「鶏卵」中から発見された「酵素」でその「溶菌作用」 (Iisys)から「Lysozyme」(リゾチーム)と命名されました。この「酵素」は「動物の組織・体液」「植物」「微生物」などに広く分布する物質ですが、「卵白」中の含有量が、「0.3%」と最も高いのです。
 
 
また、 「卵白」は、他の「リゾチーム含有物質」に比べて、生産が豊富で抽出方法についても比較的容易であることから、現在、「風邪薬」などの「医薬品用」、「食品保存料」として利用されている「リゾチーム」はすべて「卵白」から生産されています。「リゾチーム」は特に「グラム陽性菌」というグループに対する「溶菌作用」が強いとされています。このように、意外なところでも、「たまご」が役に立っていることが分かります。

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コリンについて


次に、近年、「アルツハイマー病」などの「認知症防止」に効果があると注目されている、「卵黄」から抽出される「コリン」という成分について、解説しましょう。「卵黄」は、ギリシャ語で「レシトース」 (Lekithos)と呼ばれ、「タンパク質(約14%)」「脂質(29%)」、そして「ビタミン」や「ミネラル」を多く含んでいます。
 
 
この「卵黄脂質」の内の「30%」は、「リン脂質」と呼ばれる「脂質」の一種で、「脳」「神経組織」「細胞膜」などの構造の一部を成す、きわめて重要な物質です。この「リン脂質」の中で特に重要な成分が「コリン」 (ホスファチジルコリン)で、「記憶」や「学習」に強く関係している神経伝達物質「アセチルコリン」の素になる物質です。
 
 
この物質は、「卵黄」に含まれている「コリン」であることから「卵黄コリン」とも呼ばれています。「リン脂質」は「卵黄」だけでなく、 「大豆」や「レバー」などにも含まれていますが、「リン脂質」を構成している成分や比率はそれぞれ異なります。「卵黄」はさまざまな食品と比べて、同じ重量当たりの「コリン」の含有量が、最も多いのです。
 
 
「コリン」には、先に述べた「アルツハイマー病(アルツハイマー型痴呆)の防止」などの神経機能に対する効果のほかにも、「細胞膜の働きを助ける 「脂質の代謝を改善」 「肝臓の脂肪変性を防ぐ」といった効果(抗脂肪肝作用)があると言われています。「アルツハイマー病」に効果があると知られたのは次のような研究結果からでした。
 
 
ある研究謂査によって、「アルツハイマー病」の患者の脳では、「神経伝達物質」である「アセチルコル」が著しく減少していることが分かったのです。「アセチルコリン」は、「コル」などを原料にして、「合成酵素」の働きによって作られる「神経伝達物質」です。
 
 
「アルツハイマー病」の脳内ではこの「酵素の働き」が低下していで「アセチルコリン」を効率よく増やせない状態であることが分かってきました。さらに、この「合成酵素」を活発に働かせる「ビタミンB12」が少ないことも分かってきました。
 
 
「脳」は、人体にとって大変重要な器官の1つです。このため、「脳」に毒物などの異常な物質がむやみに入り込んでくることを防ぐために、「脳関門(のうかんもん)という特別な組織があります。「脳関門」は、 「血液」によって「脳内」に流入する物質を「選別」する『関所』のような器官です。「卵黄コリン」は、この「脳関門」を通過する際に邪魔されにくく、他の食品に含まれている「コリン」に比べて、脳内に入りやすいことが分かっています。
 
 
「コリン」を取り込みやすい形で体内にとり入れる食品として、「アルツハイマー病」の「病状改善」 「予防」への効果が期待されているだけでなく、「脳血管性痴呆」の予防に対しても、その効果が期待されています。
 
 
また、他の細胞と同様に、「脳」の「神経細胞膜」を健全に保つ役割も果たし、一般的な「脳」の「老化防止」にも役立つといった研究結果も出ています。「卵黄コル」は「ビタミンB12」と一緒に摂取するとより効果が高いことから、現在、発売されている「卵黄コリン製剤」 (栄養補助食品)には「ビタミンB12」が加えてあるタイプもあります。

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たまごの内側もすごい

また、通常は捨ててしまう「カラ」の内側にある、 「卵殻膜」 (うす皮)ですが、昔はお相撲さんが稽古でケガをしたときに、純創膏の代わりに傷口に貼って使われていました。「卵殻膜」にある「保湿性」や、「卵白」に含まれている「リゾチーム」が、「天然の絆創膏」の効果をもたらしたわけです。
 
 
じつは、この「卵殻膜」は2枚あるのをご存知でしょうか。「内卵殻膜」と「外卵殻膜」の2枚があり、新鮮な「たまご」を茹でたときに「卵白」に張り付いて剥がれにくいのが、「内卵殻膜」です。「たまご」の「鈍端部」 (丸いほう)にある「気重」は、「内卵殻膜」と「外卵殻膜」の間に空気が入って出来ています。
 
 
これ以外にも、「卵黄」を加熱することで抽出した「卵油」も、昔から健康に良いとされ、有名です。「たまご」内の成分にはすでに栄養学的に解明されているものもありますが、まだ「組成」や「作用」のよく知られていない「微量成分」も、数多くあります。温めるだけで「ヒヨコ」が誕生する【生命のカプセル】である「たまご」は今後の研究によって、新たな効果をもつ成分が発見される可能性を、数多く秘め
ているのです。こうやってみると『卵ってすごい!』というのがよくわかっていただけると思います^^

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